きょうだい児とは、障害や重い病気を持つ子どもの兄弟姉妹のことを指します。
この「きょうだい児」の中には、生きづらさを感じながら生きていく人が少なくないと言われています。
特性があるお子さんは療育先などで相談ができても、きょうだい児については相談できるところが少なく悩んでいるママたちも少なくありません。
ですが、どんな生きづらさを抱えがちなのか知っておくことはきょうだい児の心のケアをする上ですごく役に立つものです。
今回は、きょうだい児が直面する具体的な生きづらさを解説していきます。
「きょうだい児」の生きづらさにはどんなものがある?
きょうだい児が直面する生きづらさは多岐にわたりますが、以下のようなものがあります。
注目の欠如
親や周囲からの注目が、病気や障害を持つきょうだいに向けられることがどうしても多いため、きょうだい児は疎外感、寂しさ、孤独を感じることがあります。
発達特性や病気があるお子さんの状態が変化することもありますよね。
その場合、診断を待つとき、病気や状態が悪化しているときなども親も不安定になりやすく、きょうだい児に手をかけることが難しくなりがちです。
一見平気そうに見えても、忙しい両親の空気を読んで、大きな我慢をしていることもあります。
責任の重圧
きょうだいの世話をする責任を負うことが多く、その結果、自分の時間や自由が制限されることがあります。
学校で「○○くんのことは兄弟の△△君にお願いしよう」とお願いされるケースも耳にします。この場合、家庭だけでなく、学校でも見守りをすることになり、本人が大きな負担感を感じていることもあります。(それを特段負担だと感じない子もいるのですが)
責任が原因で、他の同年代の子どもたちと比べて自由に遊ぶ時間が少なくなることも。
このような生活の中で、親との関係でも不満や葛藤が生じることがあります。
感情的なストレス
きょうだいの健康問題や日常のケアに伴う家庭内のストレスが、きょうだい児にも影響を与えることがあります。
また自傷や他傷があることで、不安、恐怖、悲しみ、緊張感などを強く感じることもあります。「自分のせいかもしれない」と自分を責めてしまう子もいます。
しかし、これ以上両親を困らせてはいけないという思いからその思いを口に出せないことも。
また家庭内での役割で「弟のお世話役」として期待され、自分の感情を表現する機会が限られている子もいます。特に「いい子」であることを強いられることで、大人になってからその生きづらさに気づく方もいます。
学校でのイベントや友人との予定を調整することも多く、自分の時間を持てないことからストレスを感じるケースもあります。
社会的孤立や偏見
障害や病気があるきょうだいのことを社会から理解されなかったり、周りからの好奇の視線や、言葉に傷ついたり、恥ずかしく感じたりすることがあります。
「障害や病気がある子を支えるきょうだい児」として理想の姿を勝手に押し付けられたりすることで本音を誰にも話せず苦しむ子もいます。
また、「障害や病気がある子は親やきょうだい児が支援して当然」という世間からの押し付けに苦しんでいるきょうだい児もいます。
一方で、障害を持つ兄弟と一緒に生活しているきょうだいにとって、日々の生活の中での工夫や適応は当たり前のこととなっています。
そのため、特別な障害が日常に与える影響を強く意識することは少ないこともあります。
しかし、外の世界、例えば他の家庭、メディアで描かれる家族の姿、テレビアニメのキャラクターなどが示す反応や状況を見ることで、自分たちの生活が他と異なることに気づき、それに対して驚きや戸惑い、困惑することもあります。
将来への不安
きょうだいが自立できるかどうか、またそのケアの責任が将来的に自分に降りかかるのではないか、という不安を抱えることがあります。
結婚や出産に対して強い葛藤を感じることもあります。
教育やキャリアの機会の損失
家庭内での責任が重くなることで、学業や将来のキャリアに影響を与える可能性があります。
兄弟姉妹のケアに多くの時間を費やすため、自分の教育や趣味、自己実現の機会をあえて手放そうとするケースもあります。
罪悪感
自分自身の健康や自由を楽しむことに罪悪感を感じるきょうだい児もいます。
中には「○○ちゃんはできないんだからあからさまに喜ばないで!」と言われてポジティブな感情を表現することも抑圧してしまうケースもあります。